獣医師になるには
獣医師の仕事
獣医師は、動物診療を通じ動物の保健衛生の向上に貢献します。

家畜の健康を守る
産業動物診療

 乳牛、肉牛、豚、鶏などの家畜の病気の予防・診療、飼養管理、衛生管理、繁殖の専門家として農業共済組合や産業動物診療施設で獣医師達が活躍しています。
  産業動物診療分野には、人工授精や受精卵移植など、家畜の改良増殖の仕事に活躍する獣医師もいます。
 獣医師は、貴重な資源である家畜を病気から守り、生産性を向上させることによって畜産生産者の信頼を得、我が国の畜産業を通じて国民生活を支えています。

家庭動物の健康を守る
小動物診療

 犬や猫、小鳥やウサギなど、家族の一員となっている動物〔家庭動物(伴侶動物)〕たち。その健康を支えているのが、全国にある動物病院の獣医師達です。
 今、動物病院には様々な形があります。一般診療を行うホームドクターの役割を果たす動物病院では、治療だけでなく動物たちの健康診断やしつけ、栄養相談など動物の飼育をとりまくいろいろな問題にも取り組んでいます。
 最近は専門病院が増えてきています。高度な知識や技術を国内外で習得した獣医師たちが専門的な診療を行っています。皮膚科、腫瘍科、外科、神経科、動物行動科、歯科、眼科など人の医療と同様の専門科の他、ネコ、小鳥、ハムスターやウサギなどの動物種ごとの専門病院があります。またCTやMRIをはじめとした様々な高度医療機器を備えた動物病院もあります。それらの専門家や高度獣医療施設はホームドクターと連携をとって、より進んだ動物の診療を行っています。また、狂犬病予防対策をはじめ各種の人と動物の共通感染症の予防対応も小動物診療獣医師の重要な役割です。


公務員として畜産の発展、公衆衛生の向上、動物愛護の普及等に貢献します。


家畜の伝染病の防止を通じて畜産の発展、食糧の安全供給に貢献する
家畜衛生

国内での家畜の疾病を防止することにより、畜産を守る
 口蹄疫、牛海綿状脳症(BSE)、鳥インフルエンザと、最近、日本でも再興・新興の家畜の感染症が発生しました。しかし、それらは速やかに制圧され、国内での蔓延には至っていません。
 これらの病気の防疫対策の中心にあるのが、全国の自治体に設置されている家畜保健衛生所の家畜防疫員をはじめとする獣医師です。発見したらすぐに届出が必要となる法定伝染病のほかにも多くの感染症があります。これらの病気は様々な研究機関でよりよい診断・治療を行うために日々研究され、実際の家畜防疫の現場で活かされています。日本の家畜防疫は国際的に高い評価を得ていますが、それは研究の質の高さ、確かな防疫体制、そして獣医師をはじめとする防疫に携わる方々の努力によるものです。
水際で家畜の疾病の侵入を食い止める
 農林水産省は全国の港や空港で動物検疫業務を行っており、それを担うのは獣医師です。動物検疫所では、生きた家畜のみでなく、骨・肉、皮毛類などの畜産物、人工授精に用いる精液などの検疫を行い、感染症の侵入を防いでいます。

食品衛生、感染症予防、動物愛護の普及等を通じて安全な国民生活に貢献する
公衆衛生

食中毒、BSE等の防止を通じて、公衆衛生の向上、食の安全に貢献
 家畜は食肉処理場や食鳥処理場などで、畜産物となります。その過程では獣医師が衛生検査を行っています。食肉、食鳥肉の衛生、そして牛乳などの安全を担うのも獣医師の仕事です。
人と動物の共通感染症対策
 国立食品・医薬品衛生研究所、国立感染症研究所などの研究機関をはじめ、自治体の衛生研究所では獣医師が狂犬病を始めとする人と動物の共通感染症対策に取り組んでいます。動物の病気を知り尽くす獣医師ならではの活躍が期待されています。
動物愛護の普及に貢献
 捨て犬や捨て猫が悲しい運命をたどっていく。そのような現場でもこれらの動物は獣医師に支えられています。命を守るために獣医師になったものにとってこれは、とてもつらいことです。捨て犬・捨て猫を減らしていき、そして不幸にも捨てられた動物達は新たな飼い主のもとへ、動物愛護行政はそのような取り組みを行っています。


獣医師は、人と動物が共生する豊かな生活を支えるため、学術活動をはじめ様々な分野で社会経済活動、地球環境保全に貢献します。


大学や研究機関などで、獣医学に関する調査研究を行うとともに、獣医学生を教育する
獣医学術の振興・獣医学教育・研究

 大学や研究機関では、獣医学に関連する様々な調査研究を行っています。それらの研究成果は学術集会、学会などで発表され、獣医学術の振興・普及に貢献しています。また、大学では獣医学生を教育し、次代の後継者を育てるのも、獣医師の大切な役目です。


動物の飼育体験を通じ子供たちに豊かな心を育てる動物介在教育
学校飼育動物

 学校では、動物飼育の実践を通じ子供たちの豊かな心を育む心の健康教育(動物介在教育)が行われています。獣医師は学校で飼育される動物の衛生管理、動物愛護と福祉の観点に立った適正飼育を行ううえで指導的役割を果たしています。


福祉施設訪問等の社会活動を通じて、心の健康を支える
動物介在活動

 老人ホーム、養護施設や幼稚園への動物たちの訪問。そのような活動を行ってるボランティアグループがあります。そこでも獣医師は活躍しています。動物とのふれあい活動や医師と協働しての動物介在療法を通じ、人々の心の健康を支える活動を行っています。


野生動物の保護、管理を通じて、環境を保護する
野生動物対策、動物園動物診療

 傷ついた野生動物たち。それらを救うために獣医師たちががんばっています。野生動物教護獣医師協会の設立や各地の野生動物救護センターの開設など、その輪は広がっています。
 動物園や水族館の獣医師たち。その仕事は展示されている動物たちの健康を守るだけではありません。動物園が取り組む希少動物の保護活動・繁殖活動などにも取り組んでいます。そのネットワークは世界中に広がっています。また、展示動物たちの生態にあった環境での展示を行うことによって、動物がより健康に過ごす取り組みも行われています。


医師と協力して実験動物を管理し、医薬品の開発等を通じて、人の医学にも貢献します
バイオメディカル

 動物の健康を保つにはワクチンをはじめとする医薬品が欠かせません。獣医師はこれらの動物薬を開発するとともに安全性・有効性についての検定試験などを行っています。また動物薬だけでなく人の医薬品を製造するメーカーでは、その開発に欠かせない実験動物の管理、そして製品の開発等に多くの獣医師が携わり、貢献しています。


発展途上国での家畜衛生、公衆衛生等の発展に協力し、現地の人々の生活の向上に貢献する
海外技術協力

 国際協力事業団のプロジェクトを中心に、様々に獣医学分野の国際貢献が行われています。アジア、アフリカ、南太平洋地域、中南米などで家畜の健康管理や家畜衛生分野の指導などに日本の獣医師が力を発揮しています。海外の獣医大学への設立・運営の支援など教育分野にも大きな貢献をしています。